ニコニコ動画におけるVOCALOID動画視聴者層の変遷について。

VOCALOID SNSで書いた考察4つ目。

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では早速、今回のテーマについて述べていきましょう。
今回はボーカロイド動画の視聴者層の変化について考えていきましょう。

この現象を考える上で、自分は初音ミク発売から現在までを4期に分類しました。

1.初音ミク発売からオリジナル曲に注目が集まり始める。
(2007年9月〜10月初旬)

2.オリジナル曲に注目が集まる。
(2007年10月中旬〜12月下旬)

3.初音ミク以外の他ボーカロイドに注目が集まる。
(2008年1月〜3月)

4.現在
(2008年4月〜)

これらの順にそって視聴者層の変遷を考察していきたいと思います。


◆キャラクターとしての初音ミク人気。

1.のオリジナル曲に注目が集まり始めるまでの期間ですが、この期間が最もニコニコ動画らしいファン層の取り込み時期だったと思います。
ニコニコ動画らしいというのは、ドナルドやフタエノキワミ、男女といった流行の題材を骨の髄まで流用し消費しまくるという意味でです。
VOCALOID関連でニコニコ動画の総合ランキング1位になったのが、「初音ミクを描いてみた」ということや、曲もニコニコ動画で流行っていた曲のカバーやアレンジを聞くことが多かったことからも曲というよりも、初音ミクというキャラクターを何にでも使ってしまえというような方向でした。

この期間は曲というよりもキャラクターでファン層を取り込んでいる期間だったと言えるでしょう。
DTMソフトとは知らず初音ミクを購入した人々が多かったことからも容易に想像できるのではないでしょうか。
即ち、この期間の視聴者は曲じゃなくとも初音ミクならなんでもよかったという人が多かったわけです。

この期間の末期になると「みくみくにしてあげる」が登場。
キャラクター&販促ソングの意味合いを兼ねて多数の人々に聞かれる曲となります。
同時に初期のオリジナル名曲といわれる曲も登場し、音楽的に惹かれ興味を持ち始める人が登場してきました。


ニコニコ動画内での視聴者の二極化

これら経て
2.のオリジナル曲に注目が集まる期間へと突入します。
(2007年10月中旬〜12月末)
この期間は1.の期間の視聴者層が二極化してきた時期でもあります。
初音ミクというキャラクターに飽きた層とそうではない層(音楽的に興味を持ち始めた層)です。
ここでのキャラクターに飽きた層というのは、ニコニコ内での流行りに飽きた層です。
ニコニコ動画内での流行と廃れが目まぐるしいスピードであるのはみなさんご存知かと思いますが、当然初音ミクでもそれらが存在します。
元々、キャラクターに興味をもち、音楽的にも興味を持てなかった層からすれば、今だにフタエノキワミチーターマンをやっているようなものに写ります。
初音ミクDTMソフトでなければ、これらと同じような道を辿っていたでしょう。
この時期は初音ミクDTMソフトであるという広報活動が数多く行われた時期でもあります。
ネット上でのニュース、主なテレビ報道もこの時期に行われ、google問題やTBS報道問題を経てネット上での認知度が高まりました。
DTMソフトという認知度が高まるとともにオリジナル曲も増加。
週刊VOCALOIDランキングを初めとする音楽方面に重きを置いた動画が登場してきます。

この時期のボーカロイド界隈の視聴者の出入は以下のようだと考えられます。

ニコニコ動画
●キャラクターに興味を持った層
・音楽的に興味を持てた→ボーカロイド視聴者へ
・音楽的に興味が持てなかった→飽き(視聴者にならず)

●外部メディアで興味を持った層
・音楽的に興味を持てた→ボーカロイド視聴者へ
・音楽的に興味を持てなかった→新規視聴者にならず
・キャラクターが受け付けなかった→新規視聴者にならず
CGMという動きに興味をもった→ボーカロイド視聴者へ

結果的にこの期間で本来のDTMソフトとして、音楽的に興味をもてるかどうかで視聴者の選別が行われたと考えられます。
また、この期間の特徴として作者はそれほど注目されておらず、発表される曲はなんとか全部追えるような状況にありました。
作者に注目されていないということで、発表される曲はすべて初音ミクという単一のキャラクターが歌う曲として認知されている傾向にありました。

(この時期に全部初音ミクの曲ばかりで曲が探しにくい!ということで始めたのが作者別初音ミク曲カタログ集。)

この期間の末期になると作者へのP名付けが加速していきます。
増えていく曲に対して、視聴者が全部の曲を追えませんから、初音ミクという共通認識が揺らぎ始め、各作者の初音ミクというように作者ごとにキャラクターイメージの分散が始まりました。


◆他ボーカロイドの出現

ここからは3.の2008年1月〜3月あたりについて述べていきます。
この期間の特徴は12月末のリン&レン発売、1月末のKAITO注目です。
この辺りのヒットの傾向は9月の初音ミクとほぼ同じでキャラクター先行でした。
初音ミクのときとの違いはVOCALOIDというものがニコニコ動画内の視聴者に認知されているということでした。
即ち、初音ミクVOCALOIDで作る音楽に興味を持てなかった層が新規の視聴者へとなりにくかったということです。
ここで新規視聴者になったのはVOCALOIDというよりも初音ミクの声質に興味が持てず、別の声質を求めていた層でしょう。

一方、作者によるキャラクターイメージの分散化が進んだ初音ミクですが、一定のところで所謂キャラクターソングが息を吹き返し始めます。
これは他ボーカロイドの出現により、現在のボカロ家族設定のような視聴者間で最低限一定の共通認識が欲しいという意識が働いた結果なのかもしれません。
ツールとしての使われ方が進んだ一方で、キャラクターの部分が歯止めをかけたような印象を持ちました。

VOCLOIDがどういうものかニコニコ動画内で認知された現在、新規視聴者を取り込むにはキャラクターか新たな声質かといった状況にあると考えられます。
しかし、キャラクター先行の人気はどうしてもいつか飽きが生じてきます。
この間にいかにして新規視聴者を獲得するかが課題かもしれません。


◆現在の状況

現在はキャラクターによる圧倒的人気というのは落ち着き始めているようです。
言い方は変になりますが、視聴者の耳が肥えてきた、曲を聞くようになってきたということでしょう。
音楽シーンのように、以前の考察で書いたような目立たせるテクニックのようなものが必要となってきたということです。

視聴者の住み分けが進んだ現在、これからどういう方向に行くかというのが今後の課題なのだと思います。


以上、今回の考察を終わりたいと思います。
今回はどちらかというと過去を振り返るといった内容になりましたねw


追記

初期のニコニコ動画の有名曲に弾幕が最近の有名曲では見かけられなくなったのはお気づきでしょうか?
みっくみくにしてあげるはニコニコ動画で流行る曲の作りでしたが、最近の有名曲にこの弾幕の傾向はあまりありません。
このことからもニコニコ内で流行る曲とボーカロイド界隈で流行る曲の違いが明確になってきていることがわかると思います。
要は視聴者層の違いということを言いたいだけなんですがね。