高専の建築系の内容ってこんなんでした。

高専ってすごい! 情報工学を体系的に学ぶために高専でやってきたことをまとめる。 - nigoblog

高専はすごいかも知れないが行くのは止めておいたほうがいい - 下林明正のブログ


はてな高専ネタが珍しく注目を集めているので便乗ってことで久しぶりに記事を投稿。


上記2名は情報系の学科卒らしいので、別の学科・別の高専卒業者の視点からということで。
参考事例は多い方がいいと思うのでケーススタディの一つとして受け取ってもらえばと思います。



自分が通っていた高専高専としては珍しく女性が3割いたので世に聞く高専像とはまた違うかもしれません。
といっても学科によって男女比が激しく、まったく女性がいない学科もあれば7割が女性という学科もありました。
自分が在籍していた建築の学科では男女比が5:5で野郎だらけの高専生活ってイメージはあまりありません。


まー、以下に1学年毎に当時の建築系の専門科目と学校・学年の雰囲気を述べていきましょう。
入学時に貰った授業要目をひっぱりだしてきました。
以下に単位数を書いていますが当時の高専は90分授業1年で2単位だったので1単位のものは半期しか授業がなかったと思ってもらえればOKです。


1年目
前期に建築系の専門授業がほとんどなく不満が貯まる新入生。
後期になりやっとそれらしい授業が始まりテンションが上がる。

  • 工学基礎Ⅰ   1単位
  • 工学基礎Ⅱ   1単位
  • 情報処理基礎  2単位
  • 建築設計演習  1単位
  • 造形      2単位


工学基礎Ⅰ
自分の専門学科以外にも他学科の大雑把な内容が講義される。


工学基礎Ⅱ
自分の専門学科の大まかな分野について講義。建築なら計画・構造・環境・生産について。


情報処理基礎
パソコンについて。ワード・エクセルも実技を踏まえて学習。簡単なプログラミングも。


建築設計演習
所謂、製図(手書き)。基本的な図形を描かせて道具になれるのと、設計図面をトレース(真似)させて設計図面自体に慣れさせらる。
この授業が後期になるまでないので不満が貯まるわけです。


造形
図工みたいな感じ。同一形の折り紙で立体物を作ったり、ブーメラン(木製)を作ったりした。飛び出す絵本みたいな立体絵を作った記憶もある。


2年目
若干専門授業が増える。うちの高専ではこの学年だけ全学科混合クラスでした。
専門授業のときだけ各自自分の専門授業の教室へ移動する形式。
クラス内は男子だらけの学科の集団と女子だけの集団、どちらにも混ざってない男女混合(小数)、オタク組(カードゲームやったりしてる)、その他に分かれてました。


工学基礎Ⅲ
1年目の工学基礎Ⅰがもうちょっと専門分野に入り込んだ感じの授業。
他学科のものを実験させたり体験させるものが多かった。


建築構法Ⅰ
木造建築、鉄筋コンクリートのラーメン構造とか壁式とか構造的なルールを学ぶ。


建築設計演習Ⅱ
テーマを与えられてそれに対して初めて自分で自由に設計をし図面を書いていく。木造建築。
建築構法Ⅰで獲得したルール(柱間のスパン距離等)を駆使。
有名建築家の建築物への見学もこの授業内で行われた。


コンピュータリテラシー演習
またまたワードとかエクセルとか。ブラインドタッチとかやらされました。


建築デザインⅠ
実習・課題メイン。建築写真を鉛筆でトレースをしたり、無彩色の絵画や挿絵に色付けを行ったり。


3年目
1・2年生の一般棟を離れ、4・5年生のいる専門棟へ。高校生なら最高学年だが棟では下っ端。全学年でも中堅に過ぎない。
専門授業がぐっと増える。と同時に3年修了を考えている学生とそうでない学生のやる気に明確に差がでる。
自分のときは3年修了を早々に決めているやる気のない人(6〜8人)の私語が酷く5年間の中で学習環境としては一番酷かった。

  • 応用物理学 3単位
  • 住環境計画 2単位
  • 日本建築史Ⅰ1単位
  • 環境工学Ⅰ 2単位
  • 構造力学Ⅰ 2単位
  • 材料力学  2単位
  • 建築材料  2単位
  • 建築設計演習Ⅲ 3単位
  • 建築構法Ⅱ   1単位
  • 建築創造演習  1単位


応用物理学
所謂物理。内容は普通の物理とあまり変わらないと思います。
1年目、2年目でも一般授業として物理はあったのでその延長みたいな感じでした。


住環境計画
住宅をメインとした建築計画の授業


日本建築史Ⅰ
社寺建築について。日本に古くからある木造建築についてですね。


環境工学
最初は日光(日当たり)について大きく時間が割かれてた記憶があり。後は温度とか湿度とか。雨とか雪の荷重とか。


構造力学
ひたすらモーメント図を書く演習をしてた記憶しかない。


材料力学
材料内での力の働き具合とか。H型鋼とかもやってたので建築の材料力学な内容でした。


建築材料
木材とかコンクリートとかについての講義。


建築設計演習Ⅲ
2年目の延長上で各自テーマにそって自由に設計を行うのだけど敷地の下見に行ったりと具体性が増す。
高校生を対象としたコンペに参加したりも。この学年からプロの建築家が講師として参加。


建築構法Ⅱ
ビル等大規模建築で使われる構法等の授業。建築現場で実際にどうやって建てらていくのかという内容。


建築創造演習
接着剤とパスタだけで1.5mほどの橋を作って、一番重い荷重に耐えきれたチームが優勝。
力学的なものを体感で分からせる為だとか。トラス最強の記憶がある。
あと、絵本作ったり。


4年目
制服から私服へ。高校からの編入生も参入。
内容は大体もうほとんど専門授業。得意不得意が明確になり計画系なのか構造系なのか
後期に研究室が決定し触り程度の卒業研究が開始。また、実験・実習が増えてくる。

  • 西洋建築史 1単位
  • 都市計画  1単位
  • 都市設計  1単位
  • 鉄筋コンクリート構造 2単位
  • 鋼構造        2単位
  • 建築設計演習Ⅳ    6単位
  • 卒業研究       1単位
  • プログラミング演習  1単位
  • 応用数学       2単位
  • 建築デザインⅡ    1単位
  • 建築計画Ⅰ      2単位
  • 日本建築史Ⅱ     1単位
  • 環境工学Ⅱ      2単位
  • 構造力学Ⅱ      2単位
  • 材料実験       1単位
  • 建築法規       1単位
  • 建築実験実習Ⅰ    1単位


西洋建築史
西洋の建築史。古代から始まりゴシック等教会建築やらの作りについて。


都市計画
動線やら人の動きやら都市のなりたちやらの講義。


都市設計
実習、地元の街起こし的なテーマだった。


鉄筋コンクリート構造
鉄筋コンクリートについて全般。特徴、種類や製造方法など。


鋼構造
鋼について全般。特徴、種類、製造方法、組み方等。


建築設計演習Ⅳ
手書きではなくCADで演習を行うようになる。RC(鉄筋コンクリート)造の設計・製図。
コンペへの参加。駅の設計など。


卒業研究
後期より研究室を決めて行われる。1単位なので5年生の手伝いみたいな感じ。


プログラミング演習
C言語をやった記憶が。ほとんどやる意味がない。


応用数学
数学の延長。


建築デザインⅡ
建築模型を作った以外なにかした気がするけど記憶がない。実習系。


建築計画Ⅰ
病院や駅など住宅以外の建築物についての建築計画。(3年生までは住宅しかやっていない)


日本建築史Ⅱ
Ⅰで社寺建築をやったので、住宅や城等社寺建築以外の日本の建築物について。


環境工学
音環境や明るさ(照明)環境について。


構造力学
ラーメン構造のモーメント図書いてた記憶しかない。3年生のときより講義はあったはずだけどモーメント図書いてた記憶しかない。
クラスの7割がテストで赤点になった唯一の教科だった気が。


材料実験
鋼の圧縮破壊とか、材料を壊すような内容の実験。


建築法規
法規を触りだけ。設計する上で守るべきところを軽く触っただけで詳しくはやっていない。


建築実験実習Ⅰ
グループに分かれて実験テーマ毎にコンクリートをこねて作ったりそれを壊したり、外に出て重労働が多かった気がする。


5年目
最高学年。就職、受験、卒業研究やらで完全に計画・構造、研究室毎に分かれる。
でもやっぱりこの学年になってもほとんど毎日8時限。

  • 外書購読 1単位
  • 卒業設計・構造設計演習 4単位
  • 卒業研究 8単位
  • 建築計画Ⅱ 2単位
  • 近代建築史 1単位
  • 建築設備 1単位
  • 構造計画 2単位
  • 基礎構造 1単位
  • 建築測量 1単位
  • 建築生産 2単位
  • 建築実験実習Ⅱ 1単位
  • 建築設計演習Ⅴ 3単位
  • 建築設計論・構造力学特論 1単位
  • 建築設備計画演習・構造設計特論 1単位
  • 都市解析・建築材料特論 1単位
  • 建築デザイン演習・建築振動学 1単位


外書購読
英語建築専門書籍の訳。研究室単位で行われた。


卒業設計・構造設計演習
どちらか一方を選択。自分は計画系なので卒業設計を行った。
自分でテーマを決めて調べて設計、それから学科全体で発表。


卒業研究
字のまんま。卒業前に学科全体で発表。


建築計画Ⅱ
劇場・学校について。基本的に建築計画の授業は設計演習で設計する内容のものが行われていた。


近代建築史
明治〜昭和にかけての日本建築について。


建築設備
エレベーターや空調設備、配管等について。


構造計画
これもモーメント図書いてた記憶があるけど、それ以外に何してたっけ…。


基礎構造
建物の基礎部分についての講義


建築測量
測量の方法について。


建築生産
建設会社がやってるような大規模構法とかあの辺りについて。


建築実験実習Ⅱ
Ⅰと似たような重労働系が多かった印象。測量の実習もこの中で。


建築設計演習Ⅴ
劇場建築の設計を行った。


建築設計論・構造力学特論
建築設備計画演習・構造設計特論
都市解析・建築材料特論
建築デザイン演習・建築振動学
計画系、構造系でどちらかを選択。内容は4、5年時の似たような科目の内容を深めたような感じ。


長い!科目並べるだけで相当時間を食いました。
全体的な専門の内容について。
専門の内容はしり上がりに増えていきますが、4年後期の時点で計画系(環境系)・構造系に明確に分かれます。
また、設計演習の前に建築計画で考慮すべき内容の講義が行われた上で演習に入るので初めての建築物でも割とそれなりのものが設計できます。
一方で、構造やら力学的な講義を受けた上で設計に入るので、柱のスパンやら既存の枠にとらわれがちになるのが悩みでした。
設計してて、それだと構造的に持たないだろという考えが先行してしまって芸大のデザイン系みたいな奇抜なことがやりにくい方向に行ってしまう。
よく言えば実戦的・堅実なんでしょうけどね。


CGを駆使したような授業は5年生の建築デザイン演習で3Dソフトを扱うくらいでした。
自分たちのときは4年生のときに先生の勧めで自分を含めた数名がイラストレーター・フォトショップを扱い出し
5年生のときには計画系の学生はほとんど使えてました。(学校のパソコンにイラストレーター、フォトショップがインストールされてました。)


ただ、田舎の交通の不便な場所にある学校だったので魅力的な建築物にいかに多く触れるかという点ではかなりきつい条件でした。
その空間を体験し自らの血肉にするという点では、それらの素材が数多く集まってる都市部の大学に軍配が上がるかなといったところです。


高専の環境等はまた後日詳しく述べます。